点数を欲しがりすぎることについて
泉野塾 塾長です
ここ数年、学力を身に付けるけることよりも点数を欲しがる人が非常に多くなってきた気がします。
これに関して令和5年度の東北大学の前期日程の現代文に興味深いことが書いてありました。
ダニエル・ピンクのベストセラー「モチベーション3.0」に紹介されているMIT、プリンストン大学での実験の話です。
被験者が様々なゲームに取り組むように指示されます。
そして二つのグループに分けられます。
一つのグループには金銭的な報酬がありません。
もう一つのグループには成績に応じて金銭的な報酬を出す。
結果は経済的な常識を覆すものでした。
課題が単純で簡単な場合には、報酬が高いグループほど成績が良いのですが、ほんのわずかでも創意工夫などの独創性が必要な課題になると、逆に報酬が高いグループの方が成績が悪くなるという結果になりました。
これは平均賃金が低い国で行っても結果は同じで、すこしでも独創性を必要とする課題では報酬が最も高いグループの成績が最悪であったということです。
なぜこんなことになるのでしょうか。
つまり、単純な課題では簡単すぎてそれを解くこと自体を意味のある目的とみなすことが難しいので、金銭的な報酬がモチベーションを高める。
しかし、独創性が必要な課題はそれを解くこと自体が常にある程度は楽しい、しかし金銭的な報酬が得られる仕組みにしてしまうと金銭を得ることがより上位の目的となり、
本来の目的である課題を解くことが手段になってしまう。
そうして課題解決自体の魅力が失われて意欲も低下して成績も下がる。
という内容です。
金銭を点数に置き換えますと、今の高校生の状況にそのまま当てはまる気がします。
学力よりも点数を重視しすぎるとこうなります。
点数をそれ自体を目的にしてもよい結果が得られるのは単純課題に近い高校入試までということになります。
目先の点数欲しさに解法のパターン暗記(これは今大学入試の数学の出題者から最も嫌われています。)や、さらにはサクシードの解説の丸暗記をする高校生も多数います。
こういうことを言いますと、「大学入試も結局点数で決まるのでしょう?」と言われます。
その通りです。点数で合否が決まります。
ところが不思議なことに、目先の点数を欲しがりすぎない理解重視の学習が最終的に本番での点数を引き上げることになります。
学問ぞれ自体の面白さを伝えること、そしてそのことが現在の思考力が極めて重視されている大学入試に最も適した目的意識だと思います。
10年前の大学入試問題とは大きく変わってきているのです。
定期テストや模試において、ケアレスミスで失点してももったいなくも何ともないです
大学入試の問題の面白さに比べれば取るに足らない些末なことです。
ぜひその面白さを味わってもらい、合格につなげていただきたいという思いで日々授業をしております。
2024年07月02日 19:29